MIS-C(ミスシー)って何?

国内外で子どもたちに原因不明の症状が報告されている中、新型コロナ感染歴を共通点に持つケースがあります。その中で、大阪府内に住む林煕榮くんに異変が起きました。冬休みに公園に出かけた際、体に力が入らずにしんどさを感じたとのこと。その後、高熱と激しい下痢が続き、自宅近くの総合病院を受診しましたが、コロナとインフルエンザの検査は陰性。原因不明のまま、症状は悪化していきました。煕榮くんが受診した同じ病院で「おたふくかぜではないか」と診断され、処方された薬を飲んで療養を続けましたが、症状は改善せず母親の侑加さんは不安を募らせていました。

新年を迎えた元日、煕榮くんはトイレに行こうと立ち上がった瞬間にふらつき、倒れてしまいました。熱も40度を超え、侑加さんはただの体調不良ではないと感じ、救急相談の電話窓口に連絡しました。結果、救急搬送を依頼することになりました。

搬送先は、大阪和泉市の大阪母子医療センターで、府内の小児医療の拠点となっている病院です。詳しい検査の結果、最終的に告げられたのは、

「MIS-C(ミスシー)=小児多系統炎症性症候群」

という、聞き慣れない診断名でした。この病気は、新型コロナの感染が世界で拡大して以降、子どもが感染後、川崎病のような症状を訴える事例が欧米を中心に相次いで報告され、「MIS-C=小児多系統炎症性症候群」と名付けられました。侑加さんは、煕榮くんがいつも元気でよく食べる子だったため、明らかに様子がおかしいことに不安を感じ、救急相談に電話したと話しています。

国内において、小児科医のグループによる実態調査によって、少なくとも64人がMIS-Cと診断されていたことが分かっています。主な症状は持続する発熱、消化器系の症状、全身の発疹やリンパ節の腫れ、目の充血(結膜炎)などで、全身に炎症が起きるため心臓など臓器の働きが悪くなることもあります。死亡例は国内には確認されていませんが、海外では報告されています。しかし、症状は多岐にわたり、詳しいことはわかっていません。診断の基準もまだ確立されておらず、乳幼児がなる「川崎病」と似ているため見分けるのは難しいといわれています。このような状況下で、かかりつけ医と専門の医療機関がうまく連携することが重要であるとされています。

煕榮くんは、一時は車いすが必要なほど衰弱していましたが、専門の治療を受け徐々に回復し、20日間の入院を経て退院しました。入院中は辛かったが、薬が効いてからは楽になったと話しています。また、コロナに再度感染することを避けるために気をつけると語っています。侑加さんは、コロナ自体は軽症だったが、MIS-Cのような症状が出ることを知らず、救急車で母子センターに搬送されなければ診断や治療を受けられなかった可能性があると話しています。

現在、日本小児科学会や日本川崎病学会など4つの学会がMIS-Cについてのガイドラインの作成などを進め、早期診断と治療につなげる取り組みを進めています。コロナが治っても、感染後に心配な症状が出るケースがあるため、MIS-Cについて知り、原因不明の症状があればかかりつけ医に相談することを呼びかけています。